<貸し出しモニター・レポート「吉里了間」さん>
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誰にでも音楽に好みというものがあるはず。私はどちらかというとアコースティックなものが好きである。アンプラグドなる言い方もある。
その延長線上で、クラシック音楽からワールドミュージックやPOPSまで幅広く聴いている。一言で言うなら節操がない(^^)vのである。
最近のPOPSやROCKではリズムセクションをコンピュータ打ち込みにしていることが多いようだが、伝統的な中南米ラテン音楽のアコースティック感は格別である。そもそも、パーカッションは手弾きである。ブラジル音楽のサンバやショーロなどでは実にヒューマンなパーカッションを聴くことができる。微妙な縦の線のズレやユレが打ち込みでは真似できないグルーブ感や心地良さを生む。このようなパーカッションの弾力的ともいうべき躍動感をSQ-N100、D-N100のコンビはうまく表現してくれて小気味良い。
ところで、前回トーンコントロールについて少しだけ触れた。ところが、私はこのトーンコントロールを使うことに対しては最初から抵抗がある。この回路は音楽信号を電気的に変化させるので録音されたものとは違う音バランスで聴くことになる、という刷り込みが心の内にあるからだ。使っていると、録音エンジニアの方の決めてくれた音バランスで素直に聴きたいという潔癖心が首をもたげて精神衛生上良くないのである。
もちろん、部屋の状況で変化してしまう音を補正するために使って、むしろ録音エンジニアの方の決めてくれた方向へ積極的に近づけられる良質のトーンコントロールと耳を持ち合わせていれば話は別なのであるが。私の耳に望むべくもない。
そんなトーンコントロール恐怖症とでも言うべき屈折した心理を持っているのだが、SQ-N100のトーンコントロールは良質である。いや、語弊を恐れず言うなら、節度と品位を兼ね備えたものである。

SQ-N100の節度と品位を兼ね備えたトーンコントロール」
同軸2WAY15インチだと、どうしても音像が大きくなりがちだった「声とギター/ジョアン・ジルベルト」はトーンコントロールのbassをわずかに減衰させるだけでギターのサイズも自然に落ち着き、ジョアンの声とのバランスは抜群になる。すぐそばで語ってくれているよう!に変化してくれるのだ。これなら積極的に使っても問題はなさそうである。2000年に録音された氏の10年ぶりのスタジオ演奏、S-N100スピーカーなら、トーンコントロールをバイパスさせて、そのまま自然なバランスで聴くことができる。
続いて「ブエノ・ビスタ・ソシアル・クラブ・プレゼンツ/イブライム・フェレール」(99年)を聴くと、ご機嫌なグルーブ感で部屋中キューバの空気で包まれる。エレキギターのアンプも真空管式だなぁなどと、目尻が下がってくるのである。フェレール(一昨年8月に逝去した氏に合掌)のボーカルは甘く優しく、しかし力強い。バックもベテラン勢の底力か、肩の力も抜けてアルコールなしで酔うことができそうである。
次はルイス・ミゲルにしようかなと思ったが、変化球を一球。「アルバレス・シングス・ガルデル~わが懐かしのブエノスアイレス」(99年)。アルゼンチン出身のテノール歌手マルセロ・アルバレスが不世出のタンゴ歌手ガルデルをカバーしているのだから凄い。三大テノール歌手の一人プラシド・ドミンゴがタンゴを歌ったアルバムもあるが、アルバレス盤はアルゼンチンのメンバーですべてを制作、録音場所もブエノスアイレスという企画力に脱帽。揺るぎないアルバレスの歌唱はタンゴのアンサンブルに溶け合って迫力満点。それに加え、なんと言ってもバンドネオンの音色が涙腺を熱く刺激するのである。
さて、マイブームと言うべきか、最近お気に入りの日本のボーカル「ユライ花/中孝介」。誰かがやつれた平井堅なんて言っていたのを思い出したが、きっとその人は彼らのルーツ音楽の違いを面白おかしく語りたかったのであろう。この男性ボーカル二人の高声は異質でどちらも美しい。平井堅氏がR&Bなら、中(あたり)孝介氏は島唄である。島唄というと沖縄を連想するが、氏の場合、沖縄ではなく奄美大島である。節回しや鍛えられた声が日本らしくて実に好ましく感じるのだ。氏の歌声は古楽器のように倍音たっぷりで"NeoClassico series"からは潮の香りさえ感じられる。奄美大島の観光パンフレットも広げたくなるほどで、すっかりその世界へ入って行けるのである。
S-N100はこういったボーカルや前回レポートに書いたバロック音楽や古楽器の演奏にはとても相性が良いのではないか。カタログの写真のように素敵なインテリアの中では心に染み込むボーカルか、チェンバロの演奏が流れているのかも、と想像してしまうのである。
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